前回では
・肥料成分を地力と呼ぶことにすれば、果たして何が土から出ていくのか?
・その出ていくものが分かれば、理論上土壌の疲弊は生じない
という趣旨のお話をしました。
今回はその土から出ていく成分について、考えてみましょう。
ここでは今までの常識をとりあえず置いて、一つ二つ仮定をしてみましょう。
仮定1:植物は土から炭素(元素記号:C)を何らかの形で吸収している
仮定2:植物が利用できる窒素(元素記号:N)は複数存在する
いいですか?全て仮定の話であって、こうだったらいいな、程度に考えてくださいね。
仮定1について
植物の肥料としてNPK(窒素・リン酸・カリウム)+各種ミネラルというのが農業の常識ですが、ここに炭素Cを加えたとしたらどうですか?
つまり昔の農家が、使える肥料が少ない時代に用いていた山の下草(草刈りカス)や落ち葉、稲わら(全部有機物、つまり炭素で出来ています)が実は地力を維持するための重要な肥料であった、という仮定です。
時代は回ります。昔の農法が注目されることもあるでしょう。しかし決して回る軌跡は円ではありません。らせんを描くと思っています。全く同じことはできない。
今この人口減少社会、高齢化社会を考えれば、山の下草を刈って畑に戻す作業はスケールしませんし、そのコストをペイするのはお客様だと考えればやはり炭素を外から持ってくるのは非現実的です(それを人力でやってきた昔の人凄すぎ)
そこでファースト農園では「炭素がないなら生やせばいいじゃない」と考えました。
春もしくは秋に牧草(炭素)を栽培してそのまま畑に戻し、炭素を補給することで地力を維持しよう、ということです。
そして仮定1を前提に仮定2を考えれば、もっと面白くなります。
植物が利用できるのは無機態窒素(炭素がない無機物)であるとされていますが、実はここに炭素を持つ有機物を植物が吸収できたとしたら、もっともっと栽培の幅が広がるのではないでしょうか?
具体的には、窒素源としてアミノ酸(Cを持ったN)を利用できたら、おいしい野菜ができると思いませんか?そして出ていく炭素は牧草の緑肥で補われる…
実はこの話、仮定としてお話してきましたが、全くの荒唐無稽というわけでもありません。実際にアミノ酸液肥や、炭水化物液肥は市販されています。
ファースト農園はそういった資材もうまく使って、食味・収量・持続性を兼ね備えた農業を目指しています。
2020/6/13 追記
この回答欄には、以下の通りに書かれています。
「植物の細胞が有機物(ここではビタミン、植物ホルモン、アミノ酸など)を直接吸収することが、予想されていました。」
どうやら炭素は排出するものではなく、積極的に農業利用しなくちゃならないようです・・・