最近の物流の進歩は驚くことばかりです。LINEを使ってお互いに住所のやり取りをすることなく配達ができたり、伝票入力の効率化やロッカーポスティングなど、ほんの5年前には考えられなかったことが実現しています。ドローン物流はDID(人口密集地)地区や空港周辺の飛行禁止、落下物の禁止等の問題は山積みですがいずれ実現するでしょう。
野菜の配送では鮮度、とりわけ温度が重要です。特にトウモロコシやアスパラガスのような呼吸量の大きい野菜は、できるだけ低温輸送しないといけません。当園ではトウモロコシを気温の低い早朝に収穫して、その日の「夕方」に出荷します。
上記の資料の中ほどに、野菜の温度別呼吸量が一覧表になっています。トウモロコシは品温10℃の場合は4.5℃の場合よりも呼吸量が約1.7倍大きくなります。
これはどういうことかというと、呼吸とは光合成の逆反応、つまりお日様をたっぷり浴びて甘く仕上がったコーンが、その貯蔵した甘さを消費して鮮度を維持しているのです。高温で輸送すればするほど、また輸送で時間が経てば経つほど甘さが抜けていくということです。
クール宅急便なんだから大丈夫でしょ、と思いがちがそうではありません。このページにしっかり記載があります。
http://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/customer/send/services/cool/
「保冷輸送(温度を保つ)サービスです。お荷物を冷やしたり凍らせたりする冷却機能はありません」
縦長の輸送トラックでは、フリーザー部から出る冷気が回っている間はよく冷えますが、配送の際に扉を開けたら冷気は逃げてしまいます。それを繰り返すたびに温度は上がりますので、10℃以下としているのだと思います。
先述した通りトウモロコシは10℃以下といっても4.5℃と10℃では鮮度の低下スピードが7割近く違うので、発送したトウモロコシが輸送トラックのどの場所に積み込まれるのかで品質が変わってしまいます。ざっくりと言ってしまえばフリーザー部に近いとよく冷え、扉に近いと冷えないからです。
それではせっかく甘く作ったトウモロコシがお客様の手元についたときに甘くないというリスクがありますし、何より自分ではコントロールできない部分なので、はっきり言って博打です。なので輸送の際に温度が上がることを見越して、いかに出荷の時に「キンキンに冷えたトウモロコシを発送するか」が重要になってきます。
予備冷蔵、いわゆる予冷というやつです。大型産地では真空予冷機といって、素早く野菜の芯まで冷やす設備がありますが、当園のような小型農家にはありません。だからトウモロコシは気温の低い早朝に収穫して30分以内に冷蔵庫に立てて放り込み、その日の「夕方」に出荷します。
なぜなら岡山県北エリアの発送は、朝に出そうが夕方に出そうが「トラックは夕方出発」だからです。全てのエリアでそうだとは限りませんが、朝に発送しても受付店で夕方まで冷蔵庫に入ってるので、それなら自分の冷蔵庫で扉を開けずに予冷した方がいいですよね。
何が言いたいのかというと、鮮度を重視するなら輸送や野菜の呼吸を研究しないと鮮度を保持したまま到着するとは限らないということです。鮮度はローソクの火やスマホの充電残量と違って、なくならなければいいという類のものではありません。
葉物はまた別になりますが、ファースト農園では「トウモロコシでは」そうしています。