田舎への提案

日本の野菜自給率は79%にも達しており、基本的に野菜販売はレッドオーシャンである、というのが僕の考えです。自給率をカロリーベースで計算すると30%そこそこなのですが、野菜はカロリーが低いので生産量が食料自給率に反映されないのです。

多くの農業生産法人は大型化、産地化により、その売り場のシェア率を上げることを基本的に目指します。例えばスーパーなら20%、仲卸なら30%の品目もしくは生産額を一つの組織が握ることで、買い手から作り手が「切られる」リスクが低くなるはずだからです。

レッドオーシャンでも局地的に勝つ、シェアを握るだけの生産力をつけて経営を安定化させるために規模拡大するのです。一つの組織であれば同じような機械を小さな農家が何台にも分けて持つ必要がなく、肥料も一度に買うことで安くなります。非常に効率的な訳です。

見た目は。

実際の現場を見ると、地域の農家が高齢化したので田畑を若い農業法人に集約して大規模に!とやっている組織でも、結果を出しているとは言えないです。コメをキャベツに転作して加工用に出荷している畑が、年二作作れるはずの畑で年一作しかキャベツを作らず、その間は草ボーボーなんてのはよく見られる光景です。

しかも周囲を大型機械で掘削して水はけをよくしているのでキャベツからコメに戻すことが非常に難しくなっている。当然土地を貸す側も、草がボーボーになって景観が悪くなり、害虫の巣窟となって周囲の田畑に迷惑がかかるのを嫌います。

大きな機械で耕してる癖にウチの畑が草まみれじゃないか!となってモメるのもよくあるシーンです。産みの苦しみといえば聞こえはいいですが、要はキャパオーバーなんですよね。昨今の異常気象で畑に人が入ることができずに、草に負ける。大型機械が重すぎてぬかるみ、入れない。

そんな時には旧来の、小さな家の集合体が強いです。手押しの耕運機で草を生やさないように丁寧に管理する地域の方が景観が維持されることがあります。各家々が、馬力の小さいトラクターで耕す地域の方々の顔が生き生きとしていることがあります。

農業法人に土地を貸す前の田んぼの方が実は美しい風景だったなんて笑えません。農業法人に勤めているスタッフがいつも苦しそう遅くまで灯りがついている。そんな彼らはその地域に、愛着を持ちますかね?

農業法人には経営という使命があります。それを否定はしません。その使命ゆえに、効率の悪い田畑は借りません。そんな場所は非効率だから原野に戻ればよい、という論理を持つ方もいるでしょう。

しかしその論理で競争をした場合、関東平野と北海道、長野などの一部大産地以外の生産は非効率ですよ。

適正規模による適正管理を提案します。非効率な田畑は集約するのではなく、むしろ狭めるのです。アゼ(農地と農地の境界)をなくすのではなく、軽トラが入れるようにスーパーアゼにする。

草を刈って、集めて、乾かした後に焼くというのは重労働です。アゼは細いので足を踏み外す危険もあるし、もちろん車も入れません。そこを農道として使えるようにするだけで、雑草の管理は格段に効率化します。

田畑の間を縦横無尽に軽トラが走れるようになるだけで田舎の景観は一気に美しく変わりますよ。何も集約化だけが道ではないのです。

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